ウクレレ専門オンラインショップ「カルチベイト・ウクレレ」です!独立する前、大手楽器店でウクレレの販売実績日本一だった私が考える「後悔しないウクレレの選び方」を、初心者の方にもわかりやすくお伝えしていきたいと思います。全7回のシリーズの5回目となる今回のテーマはメーカーの違いについて!
今回はウクレレメーカーごとの特徴、製造国ごとの特徴について解説していきたいと思います!前回までの記事をまだ読んでいない方は、ぜひそちらも読んでいただけますとより理解が深まると思います!
「メーカー」と「ブランド」の違いについて
混同しやすい部分なので、最初に解説しておきます。メーカーとは製造元であり、ウクレレを製造している企業のことです。
ウクレレの場合、自社ブランドを持ったメーカーがほとんどなので、大体「メーカー=ブランド」なのですが、自社ブランドを持たないメーカーもあります。自社ブランドを持ちながら他社ブランドの製造も請け負っている(OEM)メーカーも存在します。
例えばハワイの Kamaka Hawaii Inc.(カマカの社名) は「KAMAKA」という自社ブランドを持ったメーカーです。アメリカのMartin社は、ブランド名もそのまま「Martin」です。
ハワイの「Koaloha」はコアロハブランドをハワイの自社工場で製造していますが、自社ブランドであるコアロハオピオシリーズはタイ、コアラナシリーズはインドネシアのメーカーが製造しています。
日本で最も歴史のあるウクレレブランド「Famous」はキワヤ商会の自社ブランドの一つで、群馬県前橋市の三ッ葉楽器というメーカーが製造しています。
上位ブランドである「LUNA」「KIWAYA」などはまた別の国内メーカーによって製造されています。(同じ「KIWAYA」ブランドでも、2万円以下で買えるスチューデントモデルは国内製造ではありません。)
といった感じで「どこの国のブランドか」よりも「どこの国で製造されたか」ということの方が価格や品質に大きく影響します。ということで、製造国を大まかに4つのカテゴリーに分けて解説していきたいと思います。
ウクレレ製造国別のざっくりとした特徴
日本製
高い技術と細やかな仕上げで、安定的に高品質な楽器を製造しているメーカーが多いです。真面目で堅い印象は、見た目だけでなく音色にも現れている気がします。
特に「ウクレレビルダー」と呼ばれる個人製作家の方々の作る楽器は、職人技による「芸術品」と呼べるようなものが多く、日本のウクレレ愛好家は「日本に住んでて良かった!」と心から思います。
安心の品質なのは間違いないのですが、人件費などのコストも重く、全体的に価格は高めです。低価格帯(~5万円)に関してはコスト面で有利な東南アジア製の方がコストパフォーマンスが良いのではと思うこともあります。
逆にハイエンド(15万円以上〜)のウクレレは輸入品よりも割安に買えるので、国産の方が圧倒的にコストパフォーマンスが良いと感じます。
アメリカ製(ハワイ含む)
特にハワイ製のスタンダードクラスのウクレレは日本製に比べて細かい部分の仕上げがちょっと粗いかな?という印象を受けます(仕事柄とても細かいところまでチェックするからかもしれません)
個人的にはそういったおおらかさもウクレレらしい音色につながっているのかなという気もします。実際、カマカやコアロハといったハワイのウクレレの音色は日本のウクレレにはなかなか出せないと感じます。
ハワイやアメリカ本土の個人製作家のウクレレは独創的なデザインだったり、目玉が飛び出るくらい豪華な装飾だったり、さすがはアメリカ!という強烈な個性や遊び心を感じます。
輸入品ということもあり、同じくらいの材料、同じくらいの装飾のウクレレで比べると日本製のウクレレより相場は高めになっています。
東南アジア製
タイ、インドネシア、ベトナムなど。主に超低価格帯のウクレレを作っている中国のメーカーに比べ、質の高い製品の製造を担っているメーカーが多い印象があります。
コアロハのセカンドブランド「オピオ」シリーズはタイで製造、コオラウの「ポノ」、コアロハの「コアラナ」などはインドネシアで製造、ビッグアイランドはハワイのコア材を使ってベトナムで製造。
ハワイのブランドがあえて中国ではなく東南アジアの工場で製造しているのも、低価格だけどそれなりにクオリティが高いというコスパの良さからなのかもしれません。価格帯やメーカーによっては、日本製にひけをとらない品質に達していると感じます。
中国製
安く買えるウクレレたちをたくさん製造してくれています。5,000円以下でウクレレが買えちゃうのは中国のおかげですし、安かったからウクレレを買った、始めたという方もたくさんいらっしゃると思います。
そういう意味では中国製ウクレレの功績は大きいですが、品質に問題があるものが多いのも事実で、ウクレレを「おもちゃ」のイメージにしてしまっているという悪い面もあります。
アヌエヌエのように中国製でも高級・高品質なウクレレも作っているブランドが存在しますので、中国製=低品質ではないので誤解のないように。低品質になるのは低価格で作る必要があるからです。
ハワイの「3K」と言われるウクレレメーカー御三家
ハイエンドウクレレメーカーの「コオラウ」や、比較的リーズナブルな「ケリイ」といった「K」のつくハワイアンブランドは他にもありますが、最近は下記の3ブランドが御三家と呼ばれているようです。
KAMAKA カマカ
1916年に創立したハワイで最も歴史のあるウクレレメーカー。
ウクレレの定番といえばKAMAKA。シンプルな装飾で音色も素朴な「クラシック・シリーズ」と、グレードの高い材料を使い豪華な装飾を施し、音色も見た目もゴージャスな「デラックス・シリーズ」があり、どちらも甲乙つけがたい魅力があります。
トラディショナルなハワイアンウクレレといえばやっぱりKAMAKAです。廉価で買える外国製のサブブランドはありません。
KoAloha コアロハ
1995年創業のメーカーながら、おむすび型のサウンドホールやユニブレーシングなど独自のアイディアで唯一無二のサウンドを実現し、KAMAKAと並んでハワイを代表するウクレレブランドにまで成長。抜群に鳴りがよく、明るくカラッとした開放感あふれるサウンドは弾いていてとっても爽快!
熟練の職人によって製作される希少な「RED Label(レッドラベル)」という高級ラインもあります。サブブランド「コアロハオピオ」はタイ製、「コアラナ」はインドネシア製です。
Kanile’a カニレア
1998年創業でハワイのウクレレメーカーの中でも新しいブランドですがそのクオリティはハワイを代表するブランドの一つとして認められています。UVフィニッシュやTRU-Rブレイシングなどの独自の技術を取り入れ、カマカともコアロハとも違ったスタイルでファンの多いブランド。
しっかりとした作りで、ソロスタイルでもコード弾きでもバランスの取れたサウンドが魅力です。カニレアのサブブランド「アイランダー」は中国製です。
ハワイ製ウクレレを買う時の注意点
ウクレレは木材でできているため、湿度など環境の変化に影響を受けやすいです。
ハワイで作られた楽器に限らずですが、海外で作られたウクレレは日本の気候に馴染むのに少し時間がかかる傾向があります。
入荷したばかりの時は問題なかったのに、時間が経つとフレットサイドにバリが出てきたり、ボディが変形(膨らんだり凹んだり)したり、最悪の場合、ボディや指板が割れることもあります。湿度管理をきちんとした方がいいです。
フレットサイドやナットなど細部の仕上げもちょっと甘いことがあるので、購入時に検品調整してもらえる信頼できる楽器店で買うのが安心です(安いからといってフリマアプリやオークションで買うのはおすすめしません)。
ただ、トラブルが起きる可能性はどこで作られた楽器だとしてもゼロにはなりませんし、トラブルが起きたら修理調整して使えば問題ないので、気に入った楽器がハワイ製だという理由で諦める必要はないと思います。
ハワイ製のウクレレにしか出せない音というのが、確かにあるからです。
個人的におすすめの国産ウクレレブランド
日本にはメーカーやビルダー(個人製作家)のブランドがものすごくたくさんありますが、その中でも個人的におすすめのブランドをほんの一部、ご紹介いたします。
Famous
東京浅草の老舗「キワヤ商会」のウクレレブランドのひとつである「Famous」は、安心の国内生産でありながら入門者向けに価格を抑えた人気シリーズです。
合板ボディとは言え、国産ウクレレをこの価格で販売できるのはFamousだけです。ただ、あくまでも入門モデルという位置付けですので、上達してくると色々と不満というか、もっといいウクレレが欲しくなってくると思います。
2〜3万円くらいの予算で国産のウクレレが欲しい!という方にはおすすめできます。
LUNA
「Famous」でおなじみ、東京浅草の老舗「キワヤ商会」のウクレレブランドのひとつである「LUNA」は、国産ならではの丁寧なつくりでありながら価格が抑えられたコストパフォーマンスの高いシリーズです。
最初の1本として国産、単板、予算10万以下という3条件でお探しでしたら、候補に上がるブランドだと思います。(もちろん予算が許すなら下に紹介するビルダー(個人製作家)が製作したウクレレの方がおすすめではあります)
Seilen(セイレン弦楽器工房)
長野県の蓼科に工房を構えるギター・ウクレレ製作家、高橋信治氏のブランド。
本場ハワイのエキシビジョンで最優秀賞を獲得したこともある実力派で、渡辺香津美氏、Chage氏、鈴木智貴氏などなど多くのミュージシャンに愛用されています。
精密で繊細なモノ作りの高い技術、ウクレレでは一般的ではないような素材やアイディアを積極的に取り入れるなど、飽くなき探究心によって魅力的な楽器を生み出し続けています。
Sumi(SUMI工房)
長野県上田市でギター、ウクレレ、マンドリンを製作しているSUMI工房・鷲見英一氏のブランド。
特にMartinのレプリカが人気で、本家を凌ぐクオリティ・音色・貫禄を兼ね備えたウクレレはSweet Hollywaiiansの松井朝敬氏をはじめプロミュージシャンやマニアにも愛好者が多いです。
Martinレプリカだけでなく、赤エゾ松をトップ材に使用したものや、オリジナルシェイプのウクレレも人気があります。ヴィンテージMartinのようなオーセンティック、トラディショナルなウクレレが好きな方には特にオススメです。
Shimo Guitars
八王子市鑓水に工房を構えるギター・ウクレレ製作家、志茂崇弘氏のブランド。日本のウクレレビルダーの先駆け的存在であり、高木ブー氏、サザンの関口和之氏、IWAO氏など多くのミュージシャンに愛用されています。
遊び心あふれる独創的なデザインで、他の製作家とは一線を画すウクレレを多数世に送り出しています。ネックや指板にまでコアを使ったオールコアのウクレレは、素朴でカラッとしたウクレレらしい音色で人気です。
Frayns Guitars
八ヶ岳のお膝元、山梨県北杜市にてアコースティックギター、ウクレレを製作している磯田洋介氏のブランド「Frayns(フレインズ)」。
磯田さんは長野県上田市のSUMI工房にて、鷲見英一氏のもとで17年間修行し、2019年に独立。彼の作る楽器は高野寛、おおはた雄一、奇妙礼太郎、エバラ健太といった国内のプロミュージシャンも使用しています。
特にインレイの技術は抜群で、SUMI工房在籍時から精巧で美しいインレイを数多く手掛けてきました。インレイに目が行きがちですが、彼の作る楽器は演奏性も音色も素晴らしいです。
Ancestor’s Ukulele
岐阜県美濃加茂市に工房を構えるアンセスターズ・ウクレレ。ビルダーの坂井祖(はじめ)氏のこだわりが詰まった、ものすごく完成度の高い楽器を製作しています。
デザインセンスも素晴らしく、見た目がとてもおしゃれなところもポイントです。見た目だけでなく、弾きやすさ、音色も抜群です。特筆すべきはウクレレとは思えないほどのロング・サスティーン・中低音域の豊かさ・正確な音程。
音楽を奏でる楽器としてのポテンシャルが非常に高いので、ウクレレという枠にとらわれず様々なジャンルの音楽で使える楽器という印象です。
まとめ
予算によっては日本製にこだわるより、コスパ重視で東南アジア製や中国製を選んだ方が良い楽器が買える場合もあります。ハワイ製の高級楽器だから絶対に満足できるとも限りません。
闇雲に「国産がいい!」とか「ハワイ製がいい!」とか「〇〇のウクレレがいい!」という考え方は失敗につながる可能性も少なからず秘めています。という事実を知っているだけでも、トータルで満足のいくウクレレに出会う確率も上がると思います!
次回は「ウクレレの選び方⑥ 演奏スタイルの違い編」です!お楽しみに~
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