そもそも「初心者用」「入門用」のウクレレって何?
「入門用ウクレレ」という表現について
ウクレレいいな〜。始めてみようかな〜。って思った時に、大体お値段はいくらくらいで、どんなものがあるのかな?とネットで調べたり、近くに楽器店があれば覗いてみたりしますよね。
そんなときによく見たり聞いたりするのが「入門用」という言葉です。
他にも「入門用に最適」「入門モデル」「初心者向き」「初心者におすすめ」といったフレーズがありますが、そうしたウクレレに見られる共通点は、
「お求めやすい価格である(=安い)」ということです。
ウクレレに限らず、楽器、趣味の道具、スポーツ用品などでもよく見られる販促の常套句ではあるのですが、実際のところどうなんでしょう?本当に初心者や入門者におすすめだと思って言っている(書いている)のでしょうか?
私は楽器業界で働きながら、ずっとこの「初心者におすすめ」とか「入門用」という表現にモヤモヤしていました。(私自身いわゆる入門用ウクレレで始めた人間なのですが・・・)
「入門用ウクレレ」は初心者にとって本当に最適なの?
初心者、入門者にも扱いやすいとか、弾きやすいという意味で言えば、材料やパーツ、製作工程にコストをかけて作られた「高い」ものの方が、見栄えがいいし、扱いやすいし、弾きやすいし、音もいいのが一般的です。
ではなぜ「入門用ウクレレ」と書かれているものは安いものばかりなのでしょうか?
それは続くかどうかわからない初心者でも買う決心をしやすい価格であることが重要だからなのかもしれません(お客様が買いやすいということは、売る側も売りやすいということでもあります)。
誰だって続くかわからない趣味の道具に高いお金を払って失敗したくないですもんね。そういう心理を巧妙に突いてくる昔ながらの販促手法に人は簡単に流されてしまいがちです(私もそうでした)。
でも、長く続けていくつもりで、本当に良いウクレレが欲しいのであれば、たとえ初心者だとしても、心から気に入った、ちゃんとした(=高級な)ウクレレを買ってしまった方がいいと今は思っています。
それはなぜなのか?を解説します。
初心者でも良い(高い)ウクレレを使うメリット
良い楽器は、弾きやすいし、音はいいし、ストレスが少なくて弾いていて楽しいんです。
いい音がしたり、ずっと触っていたくなるようなデザインだとついつい手に取りたくなります。弾くのが楽しいので、自然と弾く頻度も増えます。弾きやすければ身体の負担が少ないので長く弾いても疲れにくい。楽しい楽しい!ってずっと弾いているうちに上達してきて、もっともっと楽しくなっていきます。
これが最大にして最強のメリットです。
他の楽器や芸術に使う道具、スポーツ用品のことはともかく、ウクレレに限って言えば、いわゆる上級者向けの(=高い、一生物の)ウクレレが初心者には扱いづらい・弾きにくいということは全くありません。むしろ楽器の性能により楽に良い音が出せます。
なので、初心者こそ良いもの(高いもの)を使った方がいいのは間違いありません。
ただ、最初から良い(高い)楽器を買ったからといって、弾かなくなってしまう可能性はゼロではありません。その失敗を恐れて「とりあえず最初は安いもの、、」という気持ちもよくわかります。
それでも、最初から良い楽器を買った方が弾かなくなってしまう確率は確実に下げられると思っています。ちょっと後ろ向きなメリットになりますが、良い楽器は大切に扱っていれば手放す時にも高く売れるというメリットもあります。
入門用(安い)ウクレレを使うデメリット
入門用と言われる比較的安価なウクレレを使うデメリットは、主に以下の3つです。
・弦高などが適正に調整されていない、仕上げが丁寧ではないことが原因で弾きにくい(=身体的ストレスが大きい)
・安価な木材やパーツを使い、安い製作コストで作るため音がよくない(=だんだんつまらなくなる)
・ペグが粗悪でチューニングしにくい(=面倒になって触らなくなる)
価格が安ければ安いほどこの3つがばっちり当てはまります。逆にいうと、値段が上がるにつれてこのデメリットも無くなる、もしくは減っていくということです。
メリットがあるとすれば、もし仮に挫折して弾かなくなったとか、壊してしまったとしても金銭的・心理的ダメージが小さいことくらいです。
このように「続けたくなるポジティブな要素」が全くないのが特徴です。多くの人がウクレレを買っても、そのうち弾かなくなる理由がこれだと思っています。
たとえ安かったからとはいえ、弾かなくなってしまったら元も子もないですよね。
安価な楽器と高級な楽器、単純にポーンと弾いた時の音色がまず全然違います。それは初心者の方でも聞き分けられるほどの違いです。
出ている音の音程(例えばドレミ)は同じでも、音の強弱を表現できる幅(ダイナミックレンジ)が広かったり、うっとりするような余韻や、ボディがよく響いて美しい倍音を豊かに含むため音に深みが感じられます。ポローンと弾くだけで癒される、心がときめく、そんな音色です。
安価な楽器は音が薄っぺらく、どのように弾いても同じように聞こえてしまう(=表現力が乏しい)ので、上手くなった実感が湧きづらく、すぐにつまらなくなってしまうのです。
ウクレレが長続きする人・続かない人
ウクレレは始めるハードルの低い、割と簡単な部類の楽器であることは間違いないのですが、とはいえ向き不向きがあるというのも事実です(このことは楽器店などの接客ではあまり伝えられません。)
ウクレレが向いている、続けられる可能性が高い人の特徴
①音楽が好き、ウクレレの音色が好き、聴いていて幸福感や癒しを感じる
②コツコツ地道に練習して、少しずつでも上達していくことに達成感や喜びを感じる
上達のスピードに関しては手先の器用さ、運動神経、音楽の素養、センス、身体的な特徴、性格などが大きく影響するので個人差がありますが、①と②の両方か、片方だけでも当てはまる方はウクレレを長く続けられる可能性が高いと思います。
どちらにも当てはまらないという方はもしかしたら続かないかもしれないので、最初から高額なウクレレを衝動買いしないほうが良いかもしれません。
2つとも当てはまっているのに、続かなかったという方。それはあなたに問題があったわけではなく、楽器に問題があった可能性が高いです。大至急、お近くの楽器店で良いウクレレを触ってみてください!
続けられるか心配!という方におすすめの始め方
まず、「楽器として問題なく使えるレベルの比較的安価なウクレレ」を買って、余ったお金で最初の2〜3ヶ月だけでもウクレレ教室に通ってみたり、ワークショップに参加してみるのも良いと思います。
これまで他の楽器を習得した経験がない方の場合、最初からすべて独学で始めるより確実に継続率があがると思います。何かしらの楽器を習得したことのある方は、楽典や合理的な練習方法など基本的なことがわかっているので上達が早い傾向があります。
続けられるか心配!という方におすすめの入門用ウクレレ
楽器として問題なく使えるレベルというのは
①チューニングが合わせにくくないこと
②弾きにくくないこと
この2つを満たしているウクレレのことです。あくまでも「〜にくくない」であって「〜やすい」ではない点にご注意ください。
その条件を満たしている比較的安価なウクレレでおすすめなのは、島村楽器さんのブランド「Hanalei(ハナレイ)」です。中国製ではありますが、弾きにくいとか、チューニングしにくいということはありません。
できれば、一番安い合板ボディの「HUK-10G」ではなく、トップ板が単板の「HUK-80」か、オール単板ボディの「HUK-100G」がおすすめです。
最初は違いがよくわからないかもしれませんが、オール単板ボディのHUK-100Gの方が、他と比べると弾いていて気持ちのいい音がします。
3機種とも弾き心地に関しては大差ありませんが、音色が良い方が弾いていて楽しいので、練習のモチベーションに影響します。
ちなみに日本製の入門用ウクレレの定番は、Famous(フェイマス)のFS-1G(マホガニー合板ボディ)、FS-5G(ハワイアンコア合板ボディ)です。どちらも合板ボディですが、日本製という安心感もあり、最初の1本として人気があります。
入門用ウクレレはなるべく店頭で買おう
ネット通販やフリマアプリの方が多少安くて便利でも、この価格帯の楽器はなるべく店頭で買うことをおすすめします。
なぜなら、安価な楽器は残念ながら不良品率も高く、フレットサイドのバリなど購入後のトラブルも起きやすいため、店頭で購入できるというのはとても安心感があります。購入後何か問題があればすぐに相談できますし、近くに店舗があるなら迷わず店頭で買いましょう。
納品時に検品してくれるので、問題があればその場で調整するか別の個体に交換してくれる可能性が高いです。これはネット通販やフリマアプリにはないメリットです。だいたいのメーカーは出荷時に検品をしていますが、それでも店舗入荷時に不良品が発見されることは少なくありません。
安さが売りの通販業者さんでは、おそらく楽器店レベルの納品前検品はしていないのではないかと思います(個人売買のフリマアプリならなおさらです)。もしかしたら検品しているのかもしれませんが、もし不運にもあなたのところに不良品が届いていたとしても、初心者のあなたには判断がつきませんよね?(割れているとか折れているとかは論外ですが)
ただ、店舗で買えば絶対安心とも言い切れず、担当してくれたスタッフさんのレベル(知識や経験)によっては残念なことが起こらないとも限りませんのであしからず。
入門ウクレレを卒業するサインを見逃すな!
これもとても重要です!
とりあえず入門用ウクレレで始める方には絶対に覚えておいていただきたいのですが、「最初ほど楽しくなくなってきた」「気がついたら最近あまり弾いてない」という兆候が現れたら、入門用のウクレレを卒業するサインかもしれないということです。
これを放置してしまうとそのままウクレレを弾かなくなってしまいます。
ぜひお近くの楽器店(できればウクレレ専門店)へ行って、いわゆる「上級者向け」や「一生物」と言われるような高いウクレレに触れてみてください。
余談:チューナーについて
ウクレレを演奏する際に必要になるのが「チューナー」です。ウクレレを買うときに一緒にすすめられると思いますが、最近のチューナーアプリは優秀なので問題なく使えます(「楽器チューナー by Piascore」というアプリがおすすめ(有料版もありますがウクレレのチューニングだけなら無料版でも十分です)。スマホを持っている方で、なるべく低予算でウクレレを始めたい方に限って言えば、最初はチューナーを買わなくても良いと思います。
しばらくウクレレを練習していると性能の良いクリップチューナーを使うメリットが身に染みてわかってきますので、その時に初めて買っても遅くはありません。チューナーは中途半端な値段のものを買うより、高くても良いものを使った方が絶対にいいというのがその理由です。高価ですがTCエレクトロニックの「UNI-TUNE(ユニチューン)」というクリップチューナーをおすすめします。おそらく業界内で最も評判の良いクリップチューナーですので、これを買っておけば間違いありません。
UNI-TUNEは人気の定番モデルなので、もし使わなくなってメルカリ等で売却する場合、箱などをしっかり取っておいて状態がよければ3,000~4,000円くらいで売れると思います。そのくらい人気のある商品です。
余談:お手入れ用品について
ついでにお話ししておくと、最初に買うメンテナンス用品はとりあえずクリーニングクロスだけで大丈夫です。日常的なメンテナンスは基本的に乾拭きで十分だからです。
ウクレレを買うとき、チューナーだけでなくあれやこれやとセットで勧められると思いますが、安いものを寄せ集めたようなセットは買わない方がいいです(高確率で安物買いの銭失いになります)
クリーニングクロスは毎日使うものなので、ちょっと良いものを買いましょう!
その理由は以下の記事をご覧ください。
まとめ「弾いていて楽しければなんでもOK!」
簡単なことなら独学でもできてしまうとってもフレンドリーな楽器なので、本やYouTubeを観ながらちょちょっと弾けるようになって満足してしまったり、そこから先何をやったらいいかわからなくて弾かなくなるというパターンは多いと思います。
そこから先、もっともっと上手くなりたい!と思えるほどハマるかどうかの鍵を握っているのが、使っている楽器の良し悪しと言っても過言ではありません。
趣味として長く続けていくには弾いていて楽しい、楽に弾ける、いい音がする、見た目が大好き!そういうことがとても重要だったりします。
弾いていて楽しい!の気持ちさえあれば「もっと難しい曲に挑戦したい!」とか、「〇〇さんのように弾けるようになりたい!」とか、ひとりで黙々と練習したり、教室に通ってみたり、仲間を見つけて一緒に練習したり、なんやかんや続けられます。
初心者の方でまだ全然弾けないとしても、音色や見た目がとても気に入った!という理由で上級者向けの高級な楽器を買うのはまったく問題ないと思っています。趣味を続ける上で、モチベーションを保つことはとても大事です。
曲が弾けなくても、ポロローンとCコードを奏でるだけで癒される、幸せな気持ちになる、そんな素晴らしいウクレレが世の中にはたくさんあります。
そんな一生物のウクレレとの出会いは、きっとあなたの生活に彩りと潤いを与えてくれるはずです。親友や家族のように大切に扱えば、生涯の友のように長く楽しくお付き合いができます。
最初に安いウクレレを買って始めることは全く悪いことではありません。ただここに書いたようなことを知らなかったがために、その先に待っている歓びを味わわずにウクレレをやめてしまうのはとてももったいないことです。
この駄文がウクレレ選びの参考になれば幸いです。
↓ウクレレの選び方について、もっと詳しく買いた記事はこちら
ウクレレのことなら何でもご相談ください!
私は全国展開している某楽器店でウクレレのトップ販売員として国内のウクレレ製作家さんやウクレレプレイヤーの方々との親交を深めてきました。
製作家さんやプロのミュージシャンとお話しすることで、たくさんのことを学びました。店頭でたくさんのお客様と接することでも、とても多くの知見を得ました。ウクレレをお探しの方へのカウンセリングや購入相談の経験には特に自信があります。
当店は、従来の「お店にあるものの中からお客様に選んで買っていただく」だけでなく、しっかりとお客様のご要望をお伺いしてお客様にとって最適なウクレレ(それが当店に在庫がない商品だとしても)をご提案させていただきたいと考えています。
これまでの経験と人脈を活かし、お客様のウクレレ生活をより楽しく豊かなものにできるようサポートしてまいります。お気軽にご相談ください!
電話やビデオ通話、対面での接客もできます!
ネットショップではありますが、お電話での接客、ZOOMやLINEなどのビデオ通話を使った接客も行っております(事前にご予約ください)。
長野県松本市に事務所がございますので、松本までお越しいただければ実際に手に取って商品をご覧いただくことも可能です(こちらも事前にご予約をお願い致します)。
電話や来店のご予約はオンラインショップの問い合わせフォームからお願い致します。
実は下取・買取もできます!
当店は長野県公安委員会から古物商の営業許可を受けておりますので、ウクレレの買取や中古楽器の販売をすることができます。
買取査定は基本的にオンラインでさせていただき、宅配買取(こちらから箱を送りますので、必要書類と楽器を入れて送り返していただく)か、事務所(長野県松本市)の近くにお住まいだったり、売却したい本数が多い場合には出張買取もご相談ください。