一昔前までは手に入るウクレレ弦の種類ってとても少なかったのですが、現在はインターネットや物流の発展のおかげでものすごくたくさんの種類のウクレレ弦が簡単に手に入るようになりました。たくさんあるウクレレ弦の中からどれを選んだらいいのかわからないという方も少なくなく、実際店頭やお電話でカウンセリングしたことが何度もあります。そこで、この記事では一般的なウクレレ弦の種類を順に解説していきます!
ウクレレ弦の種類について
ウクレレ弦の種類は大きく分けると「ナイロン」か「フロロカーボン」に分類されます。どちらもプラスチックの一種なのですが、ナイロン弦はポリアミドという樹脂でできており、フロロカーボン弦はポリフッ化ビニリデンという樹脂でできています。
近年、ウクレレ出荷時弦として一般的になったAquila(アクイラ)のナイルガット弦(白くて太いあの弦)は3種類のプラスチックを配合することでガット弦のような音が出るようにしてあるそうです。
ダダリオのチタニウム弦はナイロン弦に混ぜ物(チタンではないそうです)を加えることでナイロンよりも硬く煌びやかな音が出るようにしたものだそうです。
Aquila(アクイラ)のREDシリーズのように赤銅を加えたもの、Aquilaのシュガーのようにサトウキビから抽出されるバイオプラスティックを配合したものなど様々な種類の弦が存在しますが、代表的なウクレレ弦の種類は以下の4つです。
代表的なウクレレ弦の種類
- ブラックナイロン
- クリアナイロン
- フロロカーボン
- その他(ナイルガット、チタニウムなど)
ウクレレの弦を張り替える意味とは?
弦は使用とともに伸びたり表面が傷ついたりしてどんどん劣化していきます。ウクレレの場合、劣化したからといって切れてしまうことはほとんどありませんので買ってから一度も交換したことがないという人も少なくありません。実際にはハイフレットの音程が合わなくなってきたり、音色がパッとしなくなったりしますので、弦交換は必要なメンテナンスの一つです。
その他に、弦交換をするメリットが2つあります。
1つ目は「弾きやすくなる」ことです。買ったときについていた弦が太かった場合、細い弦に変えるだけで弾きやすくなることがあります。張力が弱めの弦を張ることで左手の押弦が楽になることもあります。
2つ目は「楽器の音色を自分の好みに近づける」ことです。ウクレレ本体の音色は改造でもしないかぎり劇的には変えられませんが、弦の種類を変えることで音色をかなり変えることができます。いろいろ試して自分の理想の音色に近づけることも可能です。
いま使っているウクレレの音色や弾き心地に不満のある方も、弦を変えることで改善することがあります!ので、本体の買い替えを検討する前に一度いろいろな弦を試してみることもおすすめします。
弾き心地、音色ともに自分にとって最高の弦が見つかれば、あなたのウクレレQOLは爆上がりすること間違いなし! 弦の種類によってどんな特徴があるのか、詳しく見ていきましょう!
定番ウクレレ弦4種の特徴を解説
ブラックナイロン弦
ダダリオ EJ53S ブラックナイロン
ブラックナイロンは密度が低く軽い素材なので弦は太め。表面はツルツルしている(ちょっと前までのEJ53はレクチファイド加工されていたため表面がサラサラしていた)。
爪弾きではアタック(音の立ち上がり)にカリっとした硬い音が乗り、歯切れの良さを感じられる。指の腹で弾くと低音が豊かでとても甘く丸い音がする。ぼやけることなくスッキリした低音が好印象。音の余韻は短く、コロンコロン、ポロンポロンという素朴で優しい音色。かといってサスティーンが全くないわけではなく、ほどよい感じ。
表現できるニュアンスが幅広く、強く弾いたり優しく弾いたりすることで多彩な音が出るが、狙った音を出すのに技術が要り、扱いにくいとも言える。ghsやKAMAKAのブラックナイロン弦も入手しやすい。
こんな人におすすめ!
ジャカジャカ歯切れの良いストロークプレイ。アタックにパンチがあるのでシャウト系(激しめ)の弾き語り。温かみがありニュアンスが多彩なのでジャズにも向く。音の減衰が早い(余韻が短い)ので、コロコロとした素朴な音色。
クリアナイロン弦
ダダリオ EJ65S クリアナイロン
クリアナイロン弦は多くの弦メーカーがリリースしている最もポピュラーなウクレレ弦。ブラックナイロン同様太めで、表面はすこしサラサラしている。
EJ65のソプラノ用は全弦1音上げのアメリカン・チューニング(a・D・F#・B)で使用することが推奨されている。実際ソプラノに張ってみると、レギュラー・チューニング(High-G)だとテンションが緩いので音にハリがなく、低音(特に3弦)がぼやける。
ブラックナイロン同様、爪で弾くとカリッとした硬いアタック音が出るが、全体的に柔らかく大人しい印象。楽器との相性もあると思うがブラックナイロンほど音にコシや深みがない気がする。
こんな人におすすめ!
弦のテンションを緩くして楽に弾きたい。パンチもサスティーンもそんなにいらないので柔らかく優しい音色にしたい。ストロークよりはフィンガースタイル(指弾き)向き。ロイ・スメックのように弾きたいならアメリカン・チューニング(Dチューニング)にして使うのがおすすめ。
・アメリカン・チューニングについてはウクレレのチューニングの種類を解説した記事をご覧ください↓
フロロカーボン弦
ダダリオ EJ99SC フロロカーボン
フロロカーボンはナイロンに比べて密度が高いため弦はかなり細め。半透明で、表面はサラサラ。弦が細いので、オクターブピッチもズレにくく、押弦時の音程のズレも感じにくい。音がよく伸びるので、音の余韻(サスティーン)を長くしたい人には特におすすめ。
アタック音は控えめで、ピッキングニュアンスはつけにくい(音に表情をつけにくい)が、ナイロンに比べてテキトーに弾いても音の粒が揃ったバランスの良い音が出しやすいので初心者にもおすすめ。
ストロークでも爪弾きでも指の腹で弾いてもブラックナイロンほど極端な音の差が出ないので扱いやすい。Martin M600 や Worth Strings CM なども定番のフロロ弦です。フロロ弦は透明~半透明が主流ですが、黒色(ORCAS)や茶色(WorthのBMなど)もある。標準的なゲージではナイロンよりも弦のテンションは低めですが、ゲージ(弦の太さ)も豊富で、ゲージを変えることでテンション感の調節もできます。
こんな人におすすめ!
ソロウクレレをメインに演奏する。音の余韻(サスティーン)を長くしたい。フィンガースタイルもストロークもバランス良く鳴らしたい。フィンガースタイルでの演奏時に音の粒を揃えたい。弦を細くして押弦しやすくしたい。オクターブピッチや押弦時の音程のズレが気になる。低価格帯のウクレレにもおすすめ。
ナイルガット弦(その他)
アクイラ ナイルガット
見た目は不透明の白、弦は太くて表面はツルツルしている。3つのプラスチックを配合した独自の素材によりガット弦に近い音色を実現しているとのこと(ガット弦に近い=天然素材特有の温かみのある音色という解釈できっと大丈夫)。
弦の販売価格は決して安くないのだがなぜか低価格帯のウクレレの出荷時弦に多く採用されている。ブラックナイロンに比べてアタックは控えめだが音の伸びは良い。
低価格帯の合板ウクレレに張った場合、爪で激しくストラムするとキャンキャンした耳障りな音になりがち。弦の個性が強いのでどのウクレレに張っても弦の個性が前に出てしまうという欠点も。
こんな人におすすめ!
ブラックナイロンは好きだけど、もう少しサスティーンが欲しい。ブラックナイロンのカリッとした硬いアタック音が嫌い。フロロカーボンよりも音にパンチが欲しい。太めの弦が好き。見た目が白い弦が好き。何よりナイルガットの音が好き。
補足:ナイルガット弦のゲージ(太さ)
公式に発表されていないのか、ネットで検索しても出てきません。2023年10月に購入した2セットを100分の1mm単位で測れるデジタルノギスで計測してみたところ、同じ数値でしたので、今のナイルガット弦のゲージはこんな感じになっていると思われます。
1弦:0.62mm (0.024インチ)
2弦:0.80mm (0.031インチ)
3弦:0.95mm (0.037インチ)
4弦:0.68mm (0.026インチ)
※デジタルノギスでの実測値(あくまでも参考程度)
チタニウム弦(その他)
コオラウ Alohi
紫がかった透明の弦で「チタニウム」と呼ばれる素材の弦です(チタニウムという名前ですが、チタンが入っているわけではありません)。ナイロンに混ぜ物をして硬度と強度を増した素材なので、音の傾向は「ナイロン」に近く、ナイロン弦にサスティーンや音のハリ、華やかさを足したような弦です。
ナイロン、フロロ、どちらもしっくりこないという方に是非試して頂きたいと思います。
※コオラウのAlohiは現在入手困難なので、手に入らない場合は同じチタニウム弦でゲージがやや太めのダダリオEJ87Sをお試しください。
ウクレレ弦選び早見表
弦を細くしたい
Yes → ◎フロロカーボン
No → ✖️ブラックナイロン △ナイルガット △クリアナイロン ✖️チタニウム
弦の張力(テンション)を緩くしたい
Yes → ◎ナイルガット
○チタニウム ○フロロカーボン(※ゲージ(弦の太さ)を細くすれば緩くなる)
No → △クリアナイロン △ブラックナイロン (ナイロン系は太いものが多く、弦張力も強め)
音の余韻(サスティーン)を長くしたい
Yes → ◎フロロカーボン
○ナイルガット ○チタニウム
No → △ブラックナイロン
△クリアナイロン
音にパンチ(強いアタック)が欲しい
Yes → ◎ブラックナイロン
○ナイルガット ○チタニウム
No → △フロロカーボン(※ゲージを太くすれば強くなる)
△クリアナイロン
オクターブピッチ、音程を改善したい
Yes → ◎フロロカーボン ※ゲージが細くなるほど有利です
ウクレレ弦のゲージ(太さ)について
弦のパッケージに書いてある数字ありますよね?これがゲージというやつです(書いてないものもあります)。左から順に1弦、2弦、3弦、4弦の太さが書いてあります。省略されていますが、28とは太さが 0.028 インチ ということです。日本人に馴染みのあるメートル法に直すとおよそ0.71mm。この数字が大きいほど太い弦ということになります。
同じ音程にチューニングするのであれば、弦の密度(重さ)によって適正な弦の太さは大体決まります。密度の低いナイロン弦を細くできないのは、それ以上細くしてしまうと規定の音程に合わせた時に必要な張力を得られない(ゆるゆるになってしまう)からです。
密度の高いフロロカーボンはナイロンより細くできる反面、太くしていくと張力が強くなり楽器にも指にも負担がかかってしまいます。なので、ゲージは各メーカー1種類ずつしか発売されていないことがほとんどです。
例外としてWorthやORCASのフロロカーボン弦のように複数のゲージセットを発売しているメーカーもあります。
その場合、ゲージが細いほど弦の張力が弱くなり、太いほど弦の張力が強くなります。張力が弱いメリットは押弦がしやすい、デメリットは音のハリやコシがなくなる。張力が強いメリットは音にハリが出て1音1音が明瞭になる、デメリットは押弦しづらくなり、音色も硬くなる。
その辺りをふまえて自分に合いそうなものを選んでみるのもいいかもしれませんね。Worthはゲージの種類がかなーりたくさんありますので、沼にハマらないようご注意ください。
ゲージの違う弦を張るときの注意点
太い弦がナットの弦溝にはまらないことがある
ウクレレのナットには弦の通る溝が切ってあります。メーカーによっては張る弦に合わせてその溝の太さや深さを調整しています。
太い弦から細い弦に変える場合は溝にはまらないとことはありませんが、逆に細い弦から太い弦に変えた時に溝にしっかりとはまらないことがあります。その状態だと特にローフレットで弦高が異常に高くなり、解放音でチューニングを合わせてもフレットを押さえると音がシャープするという不具合が出ます。
そういった場合は、弦がしっかりとはまるように溝の太さを拡げてあげる必要があります。
オクターブピッチが合わなくなることがある
メーカーによっては弦を張った後にサドルを削ってオクターブピッチを微調整(ざっくりいうと全てのフレットで音程が合うように)している場合もあるので、正確なイントネーション(音程)を求めるのであれば、弦に合わせてナットとサドルを調整するか作り直す必要があります。
ただ、溝にはまらなかった時ほど違和感はないので、特に問題を感じなければ絶対必要なリペアではありません。
おすすめのクリップチューナー
素早く正確なチューニングをするのに必須なのが「精度の高いチューナー」です。ウクレレを買うときに一緒にすすめられると思いますがチューナーは中途半端な値段のものを買うより、高くても良いものを使った方が絶対にいい!です。高価ですがTCエレクトロニックの「UNI-TUNE(ユニチューン)」というクリップチューナーをおすすめします。おそらく業界内で最も評判の良いクリップチューナーですので、これを買っておけば間違いありません!
まとめ
いろいろ試して違いを楽しもう!
ウクレレ定番弦の素材による特徴の違いを詳しく解説してきましたが、実際には自分の楽器との相性や、個人の好みも大きく影響します。特に個人の好みは熟練度や気分によっても変動しやすいため「この弦が最も素晴らしい!」という答えはないと思っていますし、それでいいと思います。
いちばん大切なのは「このウクレレを弾いている時間がとても幸せ!」と思えるかどうか。
繰り返しになりますが、弾き心地、音色ともに最高の弦が見つかれば、あなたのウクレレQOLは爆上がりすること間違いなし! です。
今回ご紹介した代表的な弦以外にも数えきれないくらいたくさんの種類のウクレレ弦が発売されていますので、季節ごとに洋服を替えるようにウクレレの弦選びも気分に合わせて替えるくらいの軽い気持ちで楽しみましょう~!
毎日弾く人なら3ヶ月から半年に1度くらいが弦交換の目安と言われていますので、弦交換ごとに違う弦を張ってみて、自分のウクレレに合う弦を探してみるのも楽しいですよ!
私もソロウクレレをよく弾くウクレレにはフロロカーボン、ジャカジャカ弾くことの多いウクレレにはブラックナイロンといった感じで使い分けています。弾くたびに張り替えるのは面倒なので、必然的にウクレレの本数も増えていくことになります。苦笑
最後に
そもそもウクレレ自体の作りや、使われている材料が低品質だった場合、弦を交換したくらいでは音色や弾き心地の改善は見込めません。はじめたての頃には気にならなかった音色や弾き心地に不満が出てきたということは、それだけあなたのレベルが上がったという証拠でもあります。前向きな気持ちで買い替えも検討してみましょう!
動画も作ってみました!
ウクレレのことなら何でもご相談ください!
私は全国展開している某楽器店でウクレレのトップ販売員として国内のウクレレ製作家さんやウクレレプレイヤーの方々との親交を深めてきました。製作家さんやプロのミュージシャンとお話しすることで、たくさんのことを学びました。店頭でたくさんのお客様と接することでも、とても多くの知見を得ました。ウクレレをお探しの方へのカウンセリングや購入相談の経験には特に自信があります。
当店は、従来の「お店にあるものの中からお客様に選んで買っていただく」だけでなく、しっかりとお客様のご要望をお伺いしてお客様にとって最適なウクレレ(それが当店に在庫がない商品だとしても)をご提案させていただきたいと考えています。これまでの経験と人脈を活かし、お客様のウクレレ生活をより楽しく豊かなものにできるようサポートしてまいります。お気軽にご相談ください!
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当店は長野県公安委員会から古物商の営業許可を受けておりますので、ウクレレの買取や中古楽器の販売をすることができます。買取査定は基本的にオンラインでさせていただき、宅配買取(こちらから箱を送りますので、必要書類と楽器を入れて送り返していただく)か、事務所(長野県松本市)の近くにお住まいだったり、売却したい本数が多い場合には出張買取もご相談ください。